創業明治13年。埼玉県春日部市にある帽子工房です。
麦わら帽子を中心に、専用ミシンをつかった帽体作り、型入れ、仕上げまで当工房の職人の手でひとつひとつ仕上げています。
普段から気軽に使っていただけるようなお手頃でシンプルな帽子を紹介していきます。
田中帽子店の歴史
創業は明治13年。日本で数少ない、麦わら帽子を中心とした天然素材の帽子工場です。現在は6代目の田中優に引き継がれています。
工場は、埼玉県の東部に位置する春日部市にあります。古利根川という大きな川が流れる春日部市は、昔から米や麦の生産地で栄えた地域です。創業当時は、麦わら帽子の材料である、「麦わら真田」を作って海外に輸出していました。 麦わら真田は、7本の麦の茎を手で編み、真田ひも状にしたものです。明治め年頃、ドイツから日本に帽子用のミシンが輸入され、ミシンを使った本格的な生産を開始しました。当時 春日部市には多くの麦わら帽子に関わる会社が存在し、後に春日部市の「伝統工芸品」に認められました。
麦わら帽子は、シート状の材料をプレスして成型する方法と違い、材料をミシンに取り付け、帽子の形に縫製したのち、プレスして成型する手間の掛かる仕事です。職人は、1本の麦わら真田を円状に重ねながら帽子の形に縫製していきます。その造形美は独特で美しく、また重なった部分に伸縮性が生まれることでかぶり心地が抜群です。また、麦わら帽子は天然素材の通気性により、涼しく感じます。
麦わら帽子は長い問、多くの農家や幼稚園や保育園の子供たちに愛用されてきました。今もなお、昔と変わらぬ製法で、伝統的な麦わら帽子を作り続けています。最近では、実用品としてだけでなく、ファッションアイテムとしても注目されています。
帽子が出来るまで
田中帽子店の工房で作る製品には、園児用帽子、レジャー用帽子や農作業用帽子などがあります。
ここでは、明治・大正・昭和・平成と受け継がれてきた伝統ある田中帽子店の製造工程をご紹介します。
製造は大きく分けて4工程に分類されます。
1. 縫製 Sewing
水に浸し柔らかくした麦わら真田を製帽用のミシンで縫製します。「渦」と呼ばれる帽子の「つむじ」の部分から縫い始め、円状に重ねて縫製していきます。時折、帽子の木型で大きさを確認しながら慎重に縫い進めます。材料 細ければ細いほど縫製が難しくなり、熟練した職人でなければ美しい形を作ることができません。熟練の高い技術で縫われた帽子は見た目の美しさだけでなく、かぶり心地も抜群です。
2. 型入れ molding
金型を取り付けた専用の型入れ概を使い、水圧でプレスし成型します。デザインによってはクラウンとブリム、別々の木型を組み合わせ、1つ1つ手蒸しで成型する場合もあります。
数多くの型があれば、組み合わせ次第で様々なデザインの帽子を作ることが可能です。
3. 装飾 Decoration
型入れ後、汗止めやリボンなどの装飾を施します。すべて手作業で行い、アクセントとなるリボンも職人が一つ一つ丁寧に縫い付けていきます。
4. 仕上げ Finishing
仕上げに細かな麦わらの「ささくれ」を取り除きます。麦わら真田には、麦わらを編んだ時に表面の皮がめくれたり、芽の部分が飛び出したりしています。そのままかぶると、チクチクしてかぶり心地を損ないます。かぶる人のため、これを1つ1つ手のひらで帽子をさすりながらカットしていきます。
かぶる人のためを想った職人の心づかいです。